不安定マルチバイブレータってなに?どうやって発振してるの?
電子工作では最初にLチカとして製作することが多い不安定マルチバイブレータ回路。どうしてチカチカするのか、周期の計算方法など、今回はそんな不安定マルチバイブレータのなぜ?どうして?について解説していこうかと思います。
皆さんこんにちは。この夏、たくさんの長期旅行をしていて非常に充実しているJinです。
今回は前回から始めた電子部品の連載記事で得られる部品の知識を組み合わせ、一つ有名な回路について解説していこうかと思います。
この記事ではJLCPCBによりご提供を頂いております。併せてご覧くださいませ。
回路図
不安定マルチバイブレータの回路図です。4個の抵抗が並列に接続されており、2つずつがペアで電解コンデンサの+とーに接続されています。
それぞれコンデンサの+側にはNPNトランジスタのコレクタ端子が、-側にはNPNトランジスタのベース端子が接続されています。
不安定マルチバイブレータではバイポーラトランジスタはエミッタ接地で使用するため、エミッタのピンはGNDに接続します。
NPNトランジスタの使い方は以下の記事で詳しくあげていますが、NPNの場合は負荷のGND側に接続します。そのため、トランジスタのコレクタ端子には負荷であるLEDを接続します。
この回路を実際に組むと、RやCの値にもよりますがD1とD2のLEDが交互に点滅します。これこそがよく知られているLチカの回路となります。
以下の記事では、これを応用したイルミネーションでクリスマスツリーをご紹介しています。
点滅の仕組み
では、この回路はどのようにして交互に点滅しているのでしょうか。電源を入れた瞬間からその流れを詳しく見ていきましょう。
まず電源をオンにすると、部品の特性で必ずどちらかのトランジスタがOn状態になります。
この時、どちらのトランジスタがOnになるかはその素子の状態などによって決まっていません。そのため、不安定マルチバイブレータなのです。
ここでは画像のように\(Q_1\)が先にOnになったとしましょう。そうすると\(Q_1\)のコレクタとエミッタが導通し、\(D_1\)のカソードがGNDに接続され、0Vとなります。これにより図の紫色のように\(I_{R_1}\)が流れ\(D_1\)が点灯します。
この動作によりコンデンサ\(C_1\)は放電となるため、黄色で表される\(R_2\)を流れる電流\(I_{R_2}\)はコンデンサ\(C_1\)へと流れていきます。コンデンサについての詳細は以下の記事をご覧ください。
\(C_1\)が放電しており\(Q_2\)のベースに電流は流れずOffとなるため、\(C_2\)は充電動作になります。これによりピンク色の\(I_{R_3}\)は\(Q_1\)のベースに流れ\(Q_1\)をOnにし続けます。青色の\(I_{R_4}\)は\(C_2\)に流れ充電します。
次に、\(C_1\)が放電しきると、流れる電流は下のように遷移します。
これまで放電状態だった\(C_1\)は充電状態に転じ、\(I_{R_1}\)と\(I_{R_2}\)は\(C_1\)から見てそれまでの逆に方向に流れます。これにより\(Q_2\)のベースに電流が流れ、Onになります。
\(Q_2\)がOnになると先ほどと同様に\(C_2\)が放電作用になります。そのためピンク色の向きに電流\(I_{R_3}\)が流れ、\(Q_2\)のコレクタとエミッタが導通することで\(D_2\)が点灯し、青色の向きに\(I_{R4}\)が流れます。
\(C_2\)が放電しきると、最初の状態に戻ります。この2状態を繰り返すことで、不安定マルチバイブレータは点滅するのです。
発振周期
具体的にこれらの状態はどれくらいの時間持続するのでしょうか。
これについては回路の定数が重要になってきます。詳しい回路定数や回路方程式などの話はまだしていませんので、ここでは少し触れるだけにしておきます。
基本的に不安定マルチバイブレータでは\(R_1\)や\(R_4\)は\(R_2\)や\(R_3\)よりも大きな抵抗値を使います。発信周波数は過渡現象で出てくる時定数の影響により、抵抗値とコンデンサの値で決まり、次の式で求められます。
$$f_{OSC} = \frac{1}{2・\ln2・C_1・R_2} = \frac{1}{1.39・C_1・R_2}$$
これを求めるには回路方程式を立て、それを解くといった一連の動作が必要ですが、先述の通りこれについては未だ解説が追い付いていないため、今回は式のみのご紹介させていただきます。
応用例
不安定マルチバイブレータ回路の特徴として、綺麗な矩形波が出力されることです。
それに反転出力もついており、また抵抗値を変化させることで発振周期を変えるのが簡単にできてしまいます。
なので、\(R_2\)や\(R_3\)に可変抵抗器を接続し、発振周期がある程度可変させられる発振回路としてイルミネーションなどで使用することが可能です。
正確な周波数を合わせるのが難しいので、時計やコンピュータに入力するOSCとしては使いづらいですね…
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回、電子工作ではかなり身近に感じられる不安定マルチバイブレータについて、その詳しい仕組みを解説させていただきました。
「不安定」ということもあり、なかなかややこしく、またそこまで扱いやすい回路ではないと感じたのではないでしょうか。
しかし、お手持ちの手ごろな素子で簡単に構成できてしまうこの簡単さはかなりの強みではないでしょうか。少しイルミネーションを作ってみよう!と思ったときに使えるのは便利ですね!
また、初心者の皆さんには実際にこれを作って実験してみることで、電子部品の回路素子を理解する良い勉強にもなりますね。
この記事はJLCPCBのご提供でお送りしています!あわせてご覧ください!
次回はこの数か月の間にてたくさん進捗を生んだので、またプロジェクトの紹介に戻ってお話ししていこうかと思います!それではまた次の記事でお会いしましょう、GoodBye!!