電気・電子回路

電流を通せんぼ!
抵抗器の原理と意外な役割

抵抗って何?どうやって使うの?LEDの保護抵抗の選び方が分からない…

電気回路の中で最も単純かつ重要な役割を果たす抵抗器。今回はそんな、抵抗器の原理と使用方法、計算方法までご紹介していこうかと思います。

皆さんこんにちは、Jinです。いかがお過ごしでしょうか。

以前お話しした電気回路の原則の続きで、今回は電流を制限する抵抗という受動素子について、掘り下げて話していこうかと思います。

この記事はJLCPCBの提供でお送りしております。併せてご覧くださいませ。

抵抗器の原理

以前の記事では、抵抗は電流の流しにくさを表す量であるとご説明いたしました。

実は抵抗は、炭素などの大きな原子に電子が衝突し、電子の進行を妨げることにより電流を調整しています。この時、電子は原子に衝突しますが、両者が振動することにより熱を発します。

これを、ジュール熱と言います。抵抗器がする主な仕事は、妨げた電流量を熱エネルギーに変換することにあります。

抵抗は抵抗率という定数が固有に物質毎に振られており、抵抗は抵抗率ρ[Ω・m]を比例定数とし、太さS[m²]に反比例し、長さd[m]に比例する量として求められます。

$$R=ρ\frac{d}{S}[\rm{Ω}]$$

余談ですが、電線を流れる電流は電子が大量に、高速に動いているとイメージしがちですが実はミクロで見れば、金属原子の自由電子がその結晶を構成する隣の金属原子に移動する程度の移動量です。

その単体の移動が電線の太さ、長さ分で起こるのでマクロでみればたくさんの電子が移動しています。

諸計算と選び方

以下に抵抗の計算方法各種を並べていきますが、抵抗値は実際にこれらの計算を行って求め、それよりも大きな値の抵抗で、市販のものを選定する流れになります。

計算したぴったりの値が売られてることはほとんどなく、E-n系列の中から自分で選ぶ形になります。それぞれの系列の抵抗値は以下のリンクで詳しく解説されていますので、併せてご覧ください。
http://sim.okawa-denshi.jp/keiretu.htm

カラーコードで抵抗値を調べることが出来ますが、このような市販のものを買った時、抵抗値は予め分かってることが多く、調べるまでもないかと思います。

現に抵抗値が不明で調べることがあったとしても、テスタを使用すれば簡単に分かりますので、ここでは割愛させていただきます。

オームの法則

前回紹介いたしましたが、電流は電圧に比例し、抵抗に反比例する特性があります。

電気回路ではこの原理を使用して様々な計算を組み合わせます。いわば、電気回路の基礎方程式となるのがオームの法則となります。

$$I=\frac{V}{R}[\rm{Ω}]$$

例えば電池と抵抗を直列に繋いだら、そこに流れる電流は上記の式で求めることが可能です。電池は固有の電圧値を持っており、単三乾電池一本だと1.5V程度です。

このような回路を定電圧動作と言います。電圧を固定して抵抗値によって電流を制御するので定電圧、です。電流を固定するような定電流動作の回路も存在します。

それはトランジスタや太陽光発電のように半導体を用いるものに多いです。半導体では回路で電子レベルの制御(拡散電流)を行うため、電流量を固定できたりします。

キルヒホッフの法則

電流、電圧においてオームの法則と同じほど非常に重要になる法則があります。それはキルヒホッフの法則です。

こちらも実は電磁気を学べば導出できるのですが、電磁気を学んでいない場合、原理で理解するしかありません。

まずは第一法則。電流に関する法則です。これを簡潔に説明すると以下のようになります。

回路上の任意の点で、電流が流れ込む量と流れ出る量の総和は常に一定(0)である。

これがキルヒホッフの電流則、単にKCL(Kirchhoff’s Current Law)といいます。どういうことかというと、電流は穴の開いたホースから水が漏れだすように外に流れ出ることはまずない、ということです。一般には、以下の式で表されます。

$$\sum_{n=1}^N I_n = 0$$

次に第二法則。今度は電圧に関する法則になります。これを簡潔に説明すると、

回路中に存在する起電力と電圧降下の総和は常に一定(0)である。

となります。電圧降下とは回路上の各素子が消費する電圧のことで、起電力はその名の通り回路に供給される電圧となります。

つまり、回路に供給される電圧と回路で消費される電圧は常に等しい、ということが言えます。電圧降下\(E_n\)として、一般には以下の式で表されます。

$$\sum_{n=1}^N V_n = \sum_{n=1}^N E_n$$

直列・並列

抵抗は直列に接続するか、並列に接続するかで抵抗値が大きく異なります。

ここで前回説明した、電圧と電流の縦横関係を思い出してください。まだ見てないよって方は、ぜひ以下のリンクよりご覧ください!

電圧は縦に流す圧力、電流は流れる電荷を横から見たものという基本的な関係があります。

それでは、縦に抵抗を繋ぐ時と、横に抵抗を繋ぐとき、電圧電流どちらの量に影響を及ぼすでしょうか?

答えは簡単です。縦に繋げば縦の圧力である電圧に、横に繋げば横から見る電流に影響を及ぼします。

縦に繋ぐことを直列接続、横に繋ぐことを並列接続と言い、電気回路の最も基本的な接続方法ですので、覚えておいてください。

抵抗器を直列に繋いだ時、電圧は個々の抵抗にかかりますから、回路全体の電圧は変わらず素子にかかる電圧(電圧降下)が一個の時より小さくなります。しかし電流は変わりません(横には変化しないため)。

抵抗器を並列に繋いだ時、電流は個々の抵抗の枝に分かれますから、回路全体の電流は変わらず各素子に流れる電流が一個の時よりも小さくなってしまいます。しかし、電圧自体は変わりません(縦には変化しないため)。

小さくなる理由としては、抵抗が\(R=ρ\frac{d}{S}\)で表されるためです。

直列では抵抗の長さが、並列では抵抗の太さが大きくなった、と考えると直列では抵抗値が大きく、並列では抵抗値が小さくなり電圧降下や電流も同時に変化するなることがオームの法則より分かります。

直列接続の場合、合成した抵抗値は

$$R=R_1+R_2+R_3+…$$

として単純な加算としてあらわされます。電圧、電流の観点から導出してみると、オームの法則とキルヒホッフの電圧則より、合成抵抗はまず以下の式で表すことが可能です。

$$R=\frac{V}{I}=\frac{1}{I}(V_1+V_2+V_3+…)$$

オームの法則より各素子の電圧降下\(V_n=R_n・I\)であることを考えれば、合成抵抗の式が導出でき、単純な加算となることが分かります。

並列の場合は簡単にはいきません。まず、並列の合成抵抗は以下の式に従います。

$$R = \frac{1}{\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}+…}$$

これも電圧、電流の観点から導出が可能で、オームの法則とキルヒホッフの電流則より、合成抵抗の逆数はまず以下の式で表せます。

$$R=\frac{V}{I}=V(\frac{1}{I_1+I_2+I_3+…})$$

オームの法則より各素子の電流\(I_n=\frac{V}{R_n}\)であることを考えれば、上記の合成抵抗の式が導かれます。

また、以前紹介したコンダクタンスG(電流の流しやすさ)という量を用いて、並列の場合は以下のように表現されることもあります。

$$G=G_1+G_2+G_3+…=\frac{1}{R_1}+\frac{1}{R_2}+\frac{1}{R_3}+…$$

分圧・分流則

電圧や電流を考えるときに、合成抵抗から再びオームの法則等に適応して電圧降下等求めるのは非常に手間がかかります。なので、直列の時と並列の時、それぞれに分圧分流という法則が存在します。

まず分圧則です。分圧は抵抗の比で計算でき、各抵抗にかかる電圧則を以下の式で簡単に導出することが可能です。

$$V_n=\frac{R_n}{R}・V$$

合成抵抗の比率に全電圧をかけると電圧降下が出てきます。なんとなくそれっぽく思うかもしれませんが一応きちんと導出しておきましょう。オームの法則より\(V=R・I\)であるため、

$$V_n=R_n・I=R_n・\frac{V}{R}$$

となります。次に分流則ですが、こちらは非常に複雑で、結論からすれば各素子に流れる電流の式は以下のようになります。

$$I_n=\frac{R}{R_n}・I$$

分圧則同様に導出してみます。オームの法則より、\(I=\frac{V}{R}\)であるため、

$$I_n=\frac{V}{R_n}=\frac{I・R}{R_n}$$

また、コンダクタンスGを用いて、次のようにも表すことが出来ます。

$$I_n=\frac{G_n}{G}・I$$

許容電力

原理で説明しましたが、抵抗器は電流を妨げるというより、電気回路上での働きは電気エネルギーを熱エネルギーに変換する、というところにあります。

しかし、抵抗が発せられるには限界があり、その限界を超えてしまうと耐えられず発火してしまいます。

電力は以下のように計算が出来ます。

$$P=V・I=\frac{V^2}{R}=I^2・R$$

市販の抵抗では許容電力が分数で表されているものが多く、代表的なものが1/2Wや1/4Wの抵抗です。それぞれ0.5W、0.25Wを超えてはいけないことになっていますので、使用する上できちんと計算してから選びましょう。

LEDの保護

LEDの内部には抵抗値をほとんど持っていないため、そのまま電池に接続すればLEDの持つ固有の絶対最大定格を超え普通に壊れてしまいます。

そこで、LEDには保護抵抗をほぼあらゆる場合でつけるかと思います。では、どのようにLEDの抵抗を選ぶか、というお話をさせて頂きます。LEDについての原理等の詳細は別の記事でご紹介させていただく予定です!

まず、LEDと抵抗は直列で接続します。なので、もうお分かりかと思いますが、電流値は変わりません。

で、LEDにかける電圧\(V_F\)を考慮すると、抵抗にかかる電圧は、キルヒホッフの電圧則より、\(V_R=V-V_F\)となります。LEDの順方向電圧\(V_F\)は各LEDによって変わりますので事前にデータシート等で確認します。

電圧が分かれば次は電流ですが、この電流によって光の強さが変わります。定格の電流で光らせると、高輝度のLEDだと非常に眩しく光ります。

なので電流を考えるときはまず定格を調べ、定格で求めた抵抗値を最小として、光の量を調節しつつ抵抗値を選ぶ、という作業になるかと思います。

まとめ

いかがでしたか?LEDの保護抵抗、抵抗の直並列など、前回よりも電気回路っぽいお話をさせて頂きました。

今後はコンデンサやインダクタ、ロジックの話などもしていこうかと思いますので、是非チェックしてみてくださいね!

この記事はJLCPCBにご提供されていますので、併せてご覧くださいませ。

それではまた、GoodBye!

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