トランジスタって何?どうやって使うの?
半導体の基本的な素子であるトランジスタですが、その用途は様々で、使いこなすのは慣れていないと少し難しいのではないかと思います。そこで今回は、そんなトランジスタの使用法についてご説明していこうと思います。
皆さんこんにちは、Jinです。いかがお過ごしでしょうか。
今回より少し、電子部品の解説シリーズを初めて行こうかと思いました。今回はその第一弾として、トランジスタの解説をしていこうかと思います。
全部を話すのは厳しいと思いますので、今回は基本的で最も重要な使用法についてご説明していこうかと思います。
この記事はJLCPCBにてご支援いただいております。ぜひご覧くださいませ。
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トランジスタ
トランジスタとは何か。と聞かれたときに一番最初に返ってくる答えとして最も多いものが、「電気を増幅する」電子部品ではないでしょうか。
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トランジスタが誕生する以前は、真空管が主流でした。真空管は真空の管の中に電極を入れ、陰極から陽極に流れる電子の流れを制御することによって電流を増幅できるといったものでした。
しかし小型化や劣化の問題があり、その代替となる部品が求められていました。そんな中登場したのがこのトランジスタという半導体です。電卓闘争も相まってこのトランジスタは瞬く間に大活躍していくのです。
トランジスタの仕組みは非常に複雑で、簡単にお話しできませんので別の記事にてご紹介させていただきます。今回はトランジスタの使用法について、ご説明いたします。
図記号
トランジスタにはPNP形とNPN形の二種類あります。回路図は下のようになっていて、それぞれコレクタ、ベース、エミッタという3つの端子が接続されています。
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回路図は上のようにpnpとnpnでは矢印の向きが違います。ベース側の電流の流れがpnpとnpnでは逆なのでそういう風に表現されています。
トランジスタの基本的な作用はスイッチングと増幅作用の2通りあります。どちらもよく使用しますので、是非覚えていただければと思います。
増幅
トランジスタによる増幅回路、基本的な構成は以下の通りになります。このような増幅回路をエミッタ接地回路と言います。エミッタが接地(基準電位)となっているのでエミッタ接地、分かりやすいですね。
他にもベースやコレクタが基準電位となるベース接地、コレクタ接地がありますが、今回はよく使うエミッタ接地について解説していこうかと思います。
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左がnpn、右がpnpです。エミッタ接地回路のトランジスタでは基本的に、ベースから入ってエミッタに流れる電流\(i_{BE}\)を増幅し、コレクタからエミッタに流れる電流\(i_{CE}\)を定めます。
即ち、電流増幅作用もありながら増幅した電流は不変となり、電圧によって変化しない定電流作用も働くという訳ですので、非常に便利で使い勝手の良い増幅素子になっています。
その増幅率はトランジスタによって定められており、\(h_{fe}\)という値で与えられます。これらを用いて、この増幅作用を表す基本的な式は
$$i_{CE} = h_{fe}・i_{BE}$$
と表されます。しかし実際使用するときには上図のようにベースに抵抗を入れることがほとんどです。このベース側の電圧\(v_B\)とするとオームの法則から
$$i_{BE} = \frac{v_B-0.6}{R_B}$$
となります。ここで0.6[V]という数値は、トランジスタのベースとエミッタ間にかかるベースエミッタ間飽和電圧といい、pn接合における電圧降下で、大体0.6[V]となります。
また先述した通り、トランジスタには定電流作用があります。キルヒホッフの法則から負荷側の回路方程式を考えると、
$$v_{cc} = v_R + v_{CE} = i_{CE}・R + v_{CE}$$
となります。これらより、エミッタ接地回路における電圧の関係式は
$$v_{CC} = i_{CE}・R + v_{CE} = h_{fe}・i_{BE}・R + v_{CE} = h_{fe}・R・\frac{v_B-0.6}{R_B} + v_{CE}$$
となります。\(v_R = h_{fe}・R・\frac{v_B-0.6}{R_B}\)であり、負荷側の抵抗\(R\)は固定で、そこに\(v_R\)の電圧をかけたいとすると、ベース側の抵抗\(R_B\)は
$$R_B = h_{fe}・R・\frac{v_B-0.6}{v_R}$$
として求めることが可能になります。このように負荷抵抗を決定し、負荷抵抗にかけたい電圧を設定するとベース抵抗の値を定めることが出来ます。
トランジスタは電流の増幅作用を持つので少々計算式が複雑になってしまいますが、キルヒホッフやオームの法則という高校物理の基本範囲を柔軟に適応するだけで計算が可能になります。
スイッチ
スイッチも基本的な回路は上の図と同じですが、ベースに入力する電圧をHighにしたり、Lowにしたりすることでエミッターコレクタ間の電流が流れたり流れなかったりします。
先ほどの基本式より、\(i_B\)を0にすれば\(i_{CE} = h_{fe}・0=0[\mathrm{A}]\)となり、電流は流れませんよね。これをトランジスタのスイッチング作用と言います。
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上の図ではマイコンからの信号をスイッチングしてリレーを駆動させるときの図です。この時、ベースとエミッタの間に抵抗がありますが、これはベースのノイズをグランドに流す役割を果たしています。
トランジスタはこのようにベースエミッタ間に抵抗を入れることもあります。
電圧のHigh/Lowを使用して、ディジタル回路を構成することもできます。実は今のTTLのロジックICは全てこのバイポーラトランジスタのスイッチング作用を使用して構成されています。
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上の図はAND回路の例です。このようにトランジスタのスイッチング作用を用いて、ロジックを組むことが可能になっています。
しかし注意しないといけないことが一つあります。トランジスタを用いてモーターやリレーなどのコイル系を制御する場合、パルスの立下り時に自己誘導によって発生した逆起電力が回路に影響を及ぼすことがあります。
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自己誘導についてはコイルの紹介時にご説明しようかと思いますが、この逆起電力を防ぐために上の図のようにコイルを制御する場合はダイオードをつけることがあります。
さいごに
いかがだったでしょうか。トランジスタは非常に複雑な構造をしていますがその使用方法自体は非常にシンプルで、慣れたら万能で扱いやすい部品になっています。
トランジスタには増幅と定電流作用があることと、それを使用することでスイッチとして使用できることを覚えておくと良いと思います。
式もいろいろ書きましたが、本当に基本的な\(i_{CE} = h_{fe}・i_{BE}\)を知っているだけで全て導出することが可能です。
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トランジスタを使いこなして、良い電子工作ライフを送りましょう!それではまた!GoodBye!