ギターを指を使わずに弾きたい!ギターを自動演奏したいけど機構作るのはむずかしそう…
そんなお悩みを抱えていませんか?しかし大丈夫です、安心してください。そんなとき、磁石こそがあなた達の強い味方となってくれるでしょう。
みなさんこんにちは、Jinです。いかがお過ごしでしょうか。2024年が始まって良くないことが続きますが、乗り越えていきましょう!
今日は私が発明(笑)した、お手軽ギター自動演奏装置「デンジギター」について、その仕組みと動作の様子をお見せしようかと思います。この記事は以前紹介したデンジギター、そのままの形で実現させた記事となります。
今回も基板はJLCPCBさんにご提供いただきました。併せてご覧ください。
ギターはどうやって音を拾うのか
まず、エレキギターの構造からみてみましょう。エレキギターの弦は鉄製で、磁性体となっています。その弦の根本には、ピックアップと呼ばれるコイルがついています。
雑な絵で申し訳ないのですが、上図のように磁性体である鉄製の弦を揺らすと、コイルの中を貫く磁束が変化します。そしてこの振動によって逆起電力(電圧)が発生します。中学校で習いますが、これを電磁誘導と呼びます。
中学校で習ったときには、こんなものが何に使うのか疑問ではありませんでしたか?ギター含め、オーディオの分野では電磁誘導がないと成り立たないほど、この電気と磁石の相互作用は重宝されているのです。
電磁誘導で発生する起電力を誘導起電力と呼びますが、基本的にギター弦の微弱な振動により発生する起電力もまた、微弱なものです。
しかしこの微弱な信号は、アンプという装置を使用することで我々の耳でも聞こえるように増幅することが可能になります。アンプは非常に高い倍率で電圧を増幅します。基本的にスピーカーには必ずと言っていいほどアンプが入っています。今回は、そのアンプも自作しました。
ギターのピックアップから放たれた微弱な電気信号はアンプにより増幅され、スピーカーに接続し音声信号へと変換されるのです。音と波については、上の記事で少し触れていますので、ぜひご覧ください。
磁石の力で自動演奏?どうやって?
さて、では今までの話のどこに自動演奏をする隙があったでしょうか。はっきり言って、ありません。というのも弦を振動させなければ、ピックアップに誘導起電力は発生せず、誘導起電力が発生しなければ、アンプを介したスピーカーにも音が流れないためです。
そう、ギターを構成する電気的な回路には自動演奏する隙はないですが、その外部、すなわちコイルに与える磁界に注目してみてはどうでしょうか。
具体的には、弦によってピックアップのコイルに誘導起電力を起こしている部分をより深く見てみましょう。先程弦の振動が「コイルを貫く磁束数を変化させる」ので電磁誘導が発生すると言いました。
それではこのコイルを貫く磁束数を、別のコイルに電圧をかける(電磁石を使う)ことで変化させると音がなるのでは?と思いつきました。
では、早速実験の様子を。右の机でソレノイド(電磁石の一種)音の周波数にあわせた矩形波を印加し、ギターにソレノイドからの磁力を与えています。
※本当は磁性体である弦そのものを振動させる予定でしたが、結局弦よりピックアップが先に音を拾ってしまいました。
実際の設計
さぁ実験で原理が検証されました。あとは実装あるのみです。ピックアップのちょうど真上に置くと音がきちんと入るので、ギターの真上に載せられるようにソレノイドのマウントを設計しました。
3Dの設計はこんな感じです。上の細長い穴はソレノイドのネジ止め用です。手持ちのソレノイドの一つが規格違いでしたので、一番右のものだけ穴が違ってます。
ギターはサイズがお決まりなので、弦の幅をちょうど覆うように横を設定しています。画像はblenderで表示させているのですが、設計自体はFusion360を用いて行っています。
実際にソレノイドを上にのせて、ギターにひっつけてみました。下の画像のような感じになっています。
こちらはギターの全体像です。このギターもそもそも電研で自作したものなので、自作ギターを自動演奏させている、なんとも面白い話ですね。
ソレノイドは放熱がエグかったのでヒートシンクを装着しています。これは改善点ですね。おそらくソレノイドのオーム数が小さすぎた(=ソレノイドの抵抗に比べて駆動電圧が高すぎた)のでしょう。
制御方法
さてお次は回路です。ソレノイドに矩形波を印加するには、増幅回路が必要です。今回はMOSFETを使用した単純な増幅回路を基板に組み入れました。
MOSFETはたくさん使用しているので、アレイのものを用いています。使用したトランジスタアレイは、TBD62083です。詳細はデータシートをご覧ください。
左のPAやらPBというのは、マイコンのI/Oピンです。マイコンではPCから送られてきたシリアル信号を解析し、PWMを出力させるタイマーを始動しています。
マイコンの基本的な仕組みは前バージョンと同じなので、こちらを参照ください。
実際の基板はこちらになります。きれいに梱包されて届きました!
実装すると下のようになりました。白いのはマイコンで、Nucleo f303のボードになります。基板の右側に、6つのXHコネクタが生えていて、そこにケーブルが刺さっているのが見えると思います。ここからソレノイドに6弦分の信号を出力しているということですね。
毎度おなじみのJLCPCBさんの基板ですが、今回も値段は安いのに本当によくできていて、なんのエラーもなく一発動作しました。(こちらの不手際でコンデンサ逆接させて爆破しちゃったのは秘密…)
ちなみにこの基板の真ん中にはオーディオビジュアライザーが搭載されています。そちらの詳しい解説は、以下の記事にてご確認ください。
基板の発注方法は、下記の記事を参考にしていただければと思います。
アンプは電研の後輩と作りました。ギターの振動は本来微弱なのですが、電磁石によって磁力が直で与えられるため、出力はそこまで上げなくても大丈夫でした。
LM386を用いたリファレンス通りの回路で駆動させています。上のものはデータシートから抜粋しています。アンプについては詳しく解説記事を今後掲載予定ですので、そちらをご確認ください。
動作の様子
デンジギター単体で撮影したものは用意できていないですが、自作楽器「EleMag Harmony」として別パートと組み合わせて演奏した動画があります。以下をご覧ください。
この楽器が演奏しているギターのパートは、デンジギター君による磁力ゴリ押し自動演奏で演奏させられています。どうでしょうか。
電子部品たちが奏でているところに、うまくハモってすごくきれいな音色を奏でているのが解ると思います。
正直、ここまでの製作品は今までにありません。これはJinを代表する大傑作で、このJin Proでも同様に、代表作として取り上げさせていただいてます。
さいごに
いかがでしたか?電磁石を使用したギターの自動演奏装置は、なかなかなくて非常に面白いアプローチではありませんか?
この世界には、仕組みを知れば様々なアプローチによっていろんな制御を行える装置が数多く存在します。ときにはこんな馬鹿なアイディアが、あんなだいそれた課題解決につながる、なんてことも珍しくないのです。
さぁ、指でギターの弦を弾くのが苦痛になっているそこのあなた。今すぐソレノイドを用意して、そのギターを磁石の力でいじめてみてはどうでしょうか!
今回は基板をJLCPCBさんにご提供いただいております。JLCPCBさんも併せてご確認いただければと思います。
また面白い製作品記事や、ノウハウ記事をどんどんと掲載予定なので、お楽しみに!次の記事であいましょう!それではまた、GoodBye!!