電子工作ノウハウ集

本当にそれ、分かってる?
定性的な理解と定量的な理解

理解するってどういうこと?勉強しても理解しているかが不明…

学習するときによく使用される、「理解」という言葉。非常に使い方が難しいですよね。自分って本当に理解できているのか?と思うことはよくあることだと思います。

今回はそんな「理解」というワードに焦点を当ててお話していこうかと思います。

皆さんこんにちは、すっかり冬が深まり寒さも増してきましたが、いかがお過ごしでしょうか。体調にはお気をつけて年を越しましょうね。

私の同好会では最近、プログラミングの講義を後輩に向けてはじめまして、その中でみんなが疑問に思うであろう理解というワードを改めてまとめて行こうと思ってます。

この記事はJLCPCBにご提供いただいております。併せてご覧ください!

理解とは何か

最初に、理解することの定義について調べていきましょう。理解という語を辞書で開くと次のように出てきます。

  1. 物事の道理や筋道が正しくわかること。意味・内容をのみこむこと。「―が早い」
  2. 他人の気持ちや立場を察すること。「彼の苦境を―する」
https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E7%90%86%E8%A7%A3/

読者の皆さんはうーんと唸りを上げることでしょう。これではさっぱりですね。まぁしかしそうですね、これですべてが分かったら最初から記事にするネタにはなりません。というのもこういう何か物事全般における「理解」と、勉学における「理解」では全く語の意味合いが違ってきます。

では勉学における「理解」を物事全般における「理解」で「理解」していくためにまず、勉強するときの論理的手順を思い返してみることにしましょう。

皆さん、物理の公式が与えられたとしてそれをどうしますか?ツールとしてその公式を用いたうえで問題を解くと思います。式に値を入れたら答えが出る、公式とはいわゆる関数ですよね。

公式のどこに値を当てはめたら答えが出るか、意識していますか?変位xや速度vなどの物理量に適当に当てはめてはいませんか?どれが何の物理量なのか、そこからどのようにして公式に当てはめると値を得ることができるか、これをまずは意識すると思います。

先ほどの理解の意味でこれを表現するとすれば、公式の使い方で「意味・内容をのみこむこと」ができているか、ということになります。つまり公式を正しく使う能力ですね。これを勉学の世界では「定量的理解」と表現します。

では次に、公式に正しく値を当てはめられることができたとして、そこに値を入れればどうして答えが得られるか、説明することができますか?公式がなぜその挙動をするか、あなたは知っていますか?

そういった面から公式を眺めることは、先ほどの理解の表現を用いると、公式の中身で「意味・内容をのみこむこと」ができているか、ということになると思います。公式の意味を解析する能力で、これを勉学の世界では「定性的理解」という風に言います。

この定性的理解と定量的理解の二本柱が成立したときはじめて勉学の世界ではそれを「理解した」と言えます。つまり問題が解けるだけの能力はただの「定量的理解」なんですよね。

次はそれぞれの理解について理解するために、一つずつを深く掘り下げていこうかと思います。

定量的理解

「定量」とはその語の通り、ある定まった量であります。公式における変数や定数などの数値全般を定量と言います。

$$5=1+4$$

この式を見てこれはそうであると感じることができたらあなたは定量的な理解が非常にできています。なぜなら、1という量と4という量が合わさった時に、5という量になるとわかっているからです。

これは算数の例ですが、物理の公式で考えてみても同じです。これは等加速度運動をしている物体のある時間tにおける速度を表した式です。

$$v(t) = αt + v_0$$

\(α\)や\(v_0\)の量が何の量なのかわかっているか、というのは定性的な理解になりますが、その量を足し合わせるとその時間における速度が割り出せるんだな~ということが分かっていれば、その各物理量の関係をきちんと理解できていることになります。

量的な関係がどのようなものになっているかを表すのが公式であり、その関係をたどって与えられたものから導きたい情報を得ることが課題解決の直接的な手段となります。よくこのような関係を表すのに図を用いられます。

皆さんご存じかと思いますが、小学校で出てくるような「みはじ」や「きはじ」はまさに複雑な3つの物理量の関係を抽象化し、定量的理解を簡単にできるような図になっています。「きはじ」や「みはじ」使うとその図のどこにどの量があったか、という右脳を使用した学習に役立てることが可能になります。

公式を正しく使用し、答えを導きだすことそのものが定量的な理解につながっているということが出来ます。

定性的理解

定量的な理解について、理解できましたか?これからは定性的な理解についてご説明していこうかと思います。定性、とは少しわかりづらい単語かと思います。意味としては定量が量的な関係を表すのに対し、定性は性質的な関係を表します。

例えば先ほどの公式$$v(t) = αt + v_0$$では、加速度と速度の量的な関係を表していると説明しました。では次になぜ、加速度に時間をかけた値が速度の変化量になるのか。というところに焦点を当ててみます。

公式における値

公式を説明するために公式とは何かを知る必要があります。まず公式を構成する要素を一つ一つ分解していくと、どんな公式にも以下の2つの量が出てきます。

  • 定数
    定数は変化のしない量のことを言います。基本的に公式のパラメータでないものはすべてその公式の定数となります。定数は公式のミソであり、定数同士の関係を紐づけているのが公式ということになります。
  • 変数
    変数とはその公式のパラメータであり、これを入力したときに定数同士の計算ができるようになり、その公式の値はただ一つに決定します。変数のことをより分かりやすく、「未知数」と呼ぶこともあります。

今回の例では、加速度\(α\)と初速\(v_0\)が定数、時間/(t/)がパラメータとして与えられる変数ということになります。

つまり、加速度と初速はどういう運動をするかで予め決定しており、その運動を表す公式が完成します。次にその運動の関数に変数を代入することで、公式から値を導き出すことができるようになります。

例えばなにかボールを初速\(10[\mathrm{m/s}]\)で投げ上げるとします。ボールには持続的に重力加速度\(g[\mathrm{m/s^2}]\)がかかりますから、このボールの\(t[\mathrm{s}]\)後の速度は$$v(t) = 10 – gt [\mathrm{m/s}]$$という風になりますね。

公式の構成

ここで、定数がなぜそのように決められているか、公式はどのようにして成立しているのか、について考えることが定性的理解をきちんと理解するために重要になってきます。そこで次は以下の二つの要素について考えてみます。

  • 定義
    \(α\)がなぜ加速度なのか。なぜその単位は\([\mathrm{m/s^2}]\)なのか。これらの疑問はこう解決できます。それは予め先人によってそう定められたからであると。このように最小単位である決められた事柄を「定義」といいます。
  • 定理
    \(α\)に\(t\)をかけたら速度の変化量になるのはなぜか。こういった「定義」を組み合わせて浮かぶ疑問については決められたものではないため、説明がつきます。定義の意味を知り、そこからたどればよいのです。このように定義を組み合わせて導きかれる事柄を「定理」といいます。

例えば加速度の単位が\([\mathrm{m/s^2}]\)であるのは、ある偉い人が物理において速度が時間によって一定に変化する運動を考えたとき、その比例定数を加速度と定めたからです。そして速度を時間で割ったものが速度の変化量の加速度であることから、単位が「メートル毎秒毎秒」として決定するのです。

すべての公式では定量的な値を最小単位の「定義」で定めます。その定義を使用して、より広くあらゆる事柄を表すときに、「定義」を組み合わせて「定理」として表現しているのです。

ここまでをまとめると、定義によって定められた定量的な変数や定数といった値を組み合わせ、運動などの事柄の性質を定理として表現することで、公式というツールを生み出しているのです。

公式と定性的理解

公式は定義に従った定理であるということがわかりました。では実際、どこからが定性的理解になるのか、というところを考えていきます。

結論から言いますと、運動の性質を直接表現している定理、これが分かれば定性的理解になります。しかし定理を理解する、と言ってもどのようにして理解するのか非常に難しいことかと思います。

その理解の物差しに、定理の「証明」があります。これは与えられた定義に従って物理量を操作し、様々に組み合わせ変換することによって定義から定理を生み出す手段になります。

この証明によって事柄の性質を定義を用いて説明できるようになることが定性的理解そのものの意味となるのです。

最後に

定量的理解は「公式を使うために必要になるもの」、定性的理解は「現象を知るために必要になるもの」と考え、定性的理解によってものごとの性質を知り、定量的理解によってそこから何かを導き出すようになります。

この二者がそろうと、その公式の本質理解したという風に表現が出来ます。皆さんもこの理解という理解について意識し、公式を正しく知って正しく使えるように日々学習を深めていってくださいね。

この記事はJLCPCBのご協力をもって掲載しております。併せてご覧ください。

それではまた!GoodBye!

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