電子工作を始めたいが、配線は面倒くさい。永続的に使えそうなキットがあればなぁ…
そんなお困りごとはありませんか?市販の電子工作キットの多くは、ブレッドボードへの配線が必要で、同梱されている部品も、いまいち使えなさそうなものばかり。
そこで今回、学校のプロジェクトにて、そんなお悩みを解決してくれる電子工作キットを開発してみたので、今回はその説明を行っていこうかと思います!
皆さんこんにちは、いかがお過ごしでしょうか。Jinです。2024年を迎え、ついに来年には万博が待っています。どのような技術が展覧されるのか、非常に待ち遠しいものがあります。
今回は、開発した電子工作のキットについて、その機能、仕組みまでご紹介させていただきます。なお、こちらのキットについては製品化を予定していますので、今後にご期待いただければと思います。
今回のプロジェクトでは、PCBWayさんに基板ご提供いただいております。ほかの企業に負けない、なかなか高品質な基板を安く販売しておられます。併せてご確認いただければと思います。
概要
電子工作キットと一概に言っても、いろいろありますね。はんだ付けのキットなのか、プログラミングのきっとなのか、はたまた実験用のキットなのか。
今回開発したものは、そのうちの特にマイコンのプログラミングに焦点を当てたものです。それもArduinoのようなマイコンではなく、もっと高性能でかつ簡単にプログラミングが行える、Raspberry Pi Picoへのプログラミングです。
そしてそのようなマイコンの勉強用に用いられるキットの多くの問題点として、キットで何かを作ろう!となったときに、その作れるものの幅が少なかったり、作れてもブレッドボードへの配線が必要で、見た目が悪くなってしまったり…
そういった課題を解決し、最終的には製品化することを目的として、本校で行われている学生アイディアチャレンジプロジェクトの起業部門として採用されたのが、この「Turtle Pico Kit」。学内でハッカソンも開催し、実際にキットの検証も行っています。
そして今回のスポンサーは、初めてご利用させていただく、PCBWayさん。仕上がりの良い基板をご提供いただきました。後ほど、基板のレビューもしています!
今回製作した基板は、既存キットの問題点を克服し、いつまでも使え、いろんなものを作れるキットを目指しました。開催したコンテストなど、詳しくは以下のスライドで確認ください。
映像出力&LED
いろんなものが作れるなら、映像出力やLEDは必須ですよね。しかもよくキットに同梱されている、普通のLCDディスプレイなどによる映像出力だけではものたりない…
そこで今回採用したのは、スイッチサイエンスに販売されている、流行りの「透明ディスプレイ」。なぜ透明になるのか、それはOLED、いわゆる有機ELディスプレイと一般に呼ばれているディスプレイの特性で説明できます。
詳しくは別の記事で取り上げようと思いますが、有機ELは自発光型ディスプレイと言って、バックライトが必要ないのです。ガラスの上に透明の電極を敷き、電極間に発光層を挟むことで、透明でかつきれいに輝くディスプレイが作れます。
また、LEDにはくねくねと曲がり、形が自在に変えられるフレキシブルLEDを使用しています。ちなみに、LEDの基板との接続は、オープンコレクタなので、基本的にはどんなLEDでも接続することができます!
回路の映像部分はこんな感じとなってます。透明ディスプレイのドライバーに繋げられるポート(SPI通信)を、基板側にXHコネクターで用意しております。
またLED用のオープンコレクターに流せる電流は、ベース電流が\(\frac{3.3\rm{[V]}}{10\rm{[kΩ]}}=0.3\rm{mA}\)ほどなので、仮にトランジスタの増幅率を100とすると、だいたい30mAほ流せることになります。
音声出力
映像出力ときたら、次に音声出力。多くのキットで、音を出すといえば圧電スピーカーではないでしょうか。圧電スピーカーで鳴らせるのは、ピーという音のみ。周波数を変えれば音階がならせますが、これじゃ非常に不便です。
本キットでは、汎用の音声出力として、3.5mmのオーディオジャックから出力できるように、DACを搭載しました。これによって、wavファイルやmp3ファイルを直接再生できるようになります。
また今はまだ未確認ですが、ソフトウェアによっては音声をストリーミングすることもできると思います。音声出力のDACには、PCM5102Aを使用しています。
アクチュエーター3種
アクチュエーターとして、3つのモーターを制御できるようにしています。
1つ目のモーターは、DCモーター。これは多くのキットに使われている一般的なモーターです。DCモーターを制御するモータードライバーが基板上に実装されていて、DCモーターはピンソケットにつなぐだけで回転させることができます。
しかし、現段階では搭載しているDCモータードライバーは電流が500mAと制約が大きいです。こちらについては今後、改善していく予定です!!
次にBLDCモーターを動かせるように、リポバッテリー等と接続できるポートを用意しています。しかしこれも、ESCという外部のBLDCモーターを別で用意しているので、今後改善していく必要はありそうです。
最後に、サーボモーターも回転させることができます。サーボモーターとBLDCモーターはほとんど制御方法も同じなので、違う形状ではありますが同じように回転させることができます。
基板上に3ピンのピンヘッダが合計で5つ搭載されており、それぞれからESCとサーボモーターに接続することが可能になってます。
回路としては至って単純で、ドライバーとピンそれぞれにマイコンのGPIOピンを接続しているだけです。
センサー3種
センサーも豊富に用意しております。用意しているセンサーは、温湿度センサー、超音波センサー、3軸加速度センサー。いくつかのセンサーが複合しているものなので、細かく分ければ6種の物理量の計測が可能となります。
回路はこちら。3軸加速度センサーや温湿度センサーはI2Cのものを使用していますので、実は3軸加速度センサーじゃなくてもI2Cのセンサーであれば何でも繋げられます。
超音波センサーはちょっと特殊で、EchoとTrigの2つのピンで制御するため、他のセンサーのI2C系統とは別に切り離して接続しています。
それぞれのセンサーの値を計測し、Web上に表示させるプログラムを動かした結果です。6つの物理量を正確に計測できています。
また搭載しているマイコンはWiFi接続可能なモデル(Raspberry Pi Pico W)ですので、このようにIoTでWebを使って制御することもできちゃいます。
ストレージや接続など
マイコンは、先述したようにWiFi接続可能なRaspberry Pi Pico Wを使用していますので、Web上に何か表示させたり、Webから制御をすることができます。
PCとの接続には、Type-Cのケーブルを用い、またMicroSDカードによるストレージにも対応しています。ストレージはSPI通信で接続しています。
USB PDを使用しようと思うと、Type-Cのコネクタにプルアップ抵抗が必要なのですが、今回忘れてしましいました。なので、Type A to Cケーブルしか使えないのですが、今後はC to Cでもできるように対応させていこうと思っています!
プログラミングは、主にType−Cのコネクタ似て接続して行う形になります。Raspberry Pi Pico Wなので、ファームウェアさえ書き込んでしまえば、そのままシリアル通信で実行できてしまうのは非常に良い点ですね!
VSCodeのプラグインや、Arduinoのエディタを使用しても簡単にプログラミングすることができます!そうした点では、開発環境に困らないというのはなかなか良いのではないでしょうか。
その他にもスイッチが搭載されていますが、基板や回路図から分かると思うので、ここでは割愛させていただきます。
基板レビュー
さて、ここまでで大まかな機能紹介を行ってきました。ここからは実際に設計した回路と、実装した基板を見ていきたいと思います!
回路図と配線図です。ちょっとわかりにくいとは思いますが、全機能の動作は確認しています。どうでしょうか!コネクタに部品をつなげるだけで、簡単に部品と接続でき、Pythonによってプログラミングによる開発も簡単に行えます!!
PCBWayさんに発注した基板はこんな感じ。先頭に超音波センサーをつけることで、基板の色味も相まって亀のように見えることから、Turtle Pico Kitと名付けました!!
この基板は、「つや消し緑」という他社と比べてもなかなか珍しい色合いで、結構気に入ってます!さらさらと触り心地もよく、配線もしっかりと接続されています。
全部の機能を試した動画は今のところはないのですが、Instagramにて製作風景と、一部の動作確認の動画を投稿しています!!今後、全部の機能を撮影した動画を編集しYouTubeに投稿しようと思っているので、ご期待ください!!
さいごに
いかがでしたでしょうか。今回は、PCBWayさんのご提供及び本校の学生アイディアチャレンジの支援を受けて製作した、実践的なプログラミング学習兼IoT開発キット「Turtle Pico Kit」をご紹介させていただきました。
PCBWayさんには、非常に良い基板をご支援いただいています。みなさんもぜひ、PCBWayさんに基板を発注してみてください!
最後に告知です!!Turtle Pico Kit及びそれを使用して開催した学内コンテスト「IoT Creative Contest」の成果物は、Kariya Micro Maker Faire 2024にて展示することとなりました!!!👏
EleMag Harmonyも併せて展示予定です!!
愛知県で行われる初のメーカーフェアということで、はるばる展示しに行きます!奈良高専TechRingという名前で展示予定ですので、お近くの皆さんや、興味ある方は、是非足をお運びくださいm(_ _)m
最後になりましたが、「奈良高専学生アイデアチャレンジ」およびTechRing、PCBWayのご支援に心より感謝申し上げます。それでは皆さん、また次の記事でお会いしましょう、GoodBye!!